【読書日記】フェアトレードのおかしな真実 僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た

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タイトル:フェアトレードのおかしな真実 僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た
原題:Unfair Trade -The Shocking Truth Behind "Ethical"Business-
著者:Conner  Woodman
出版社:英治出版 2013年

 

 

 

エシカルなビジネス

 発展途上国から産出、製造される資源や一次産品、工業製品が世界の市民の生活に欠かせないものになるにつれ、その生産現場の悲惨な実態も消費者である先進諸国に伝わるものとなってきました。

 そこで、CSR(企業の社会に対する責任)であったり、エシカル(倫理的)なビジネスと考え方が現れて来たのです。

その実態は?

 しかしながらそういった活動が、本当にその目的に即したものなのか?

 疑問に思った著者は、その取材力をフル稼働させて世界各地に出向いたのです

世界の現場から答えを探す旅

ニカラグアのロブスター漁

 買い取る会社はCSRを順守していると主張、しかしその証は?

 中間業者が漁師から買い取り、納入するロブスターにはそれらがどのような取り方をされたのか、わかる証拠はない。現場では命を削ってロブスターを捕獲する漁師たちの姿が。

イギリスのフェアトレード産業

 公正な取引ができている、という認証を与える機関がある。

 彼らはその収益の半分を自分たちの活動を知らしめる広告費に注ぎ込んでいる。消費者は認証がある商品を好んで買うかもしれないが、認証にかかるコストが転嫁された割高な商品を買うかといえばそうではない。

 広告費を捻出するために彼らは途上国の農家たちから商品を安く仕入れており、仮に市場価格が上昇しても定められた”最低価格”以上で買い取られることはないのだ。

世界の工場、中国の実態

 中国は左脳思考が優先する。いかに合理的に物事を進めるか、に重点が置かれる。

 ここ数十年、開発と発展にまい進してきた中国の企業、工場は利益を出すこと、その一点に目標を集中させてきた。その一方、個々の従業員への目配りや環境への配慮、社会益といったものへの関心はなかったに等しい。

フォックスコンといった企業での職員の自殺にその実態が表れている。

ラオスのゴム畑

 ラオスと中国の国境地帯の街には、中国語が飛び交うカジノ街がある。中国本土ではカジノは禁止。だから多くの中国人が国境を越えて遊びに来る。

 そして、国境を越えてくるのはそれだけではない。

 中国国内でゴムの需要がどんどん伸びている。そしてその需要を満たすために国境を越えたラオスの山村が次々とゴム林と化している。そしてそのゴム畑で働くのは中国人なのだ。ラオス人のゆったりした仕事のペースでは間に合わないのだ。

 たとえ経済的なメリットがあるとしても、自国の産業発展のために隣国の山村の姿を変え、文化を変えてしまうことに倫理的な問題はないのだろうか?

 中国人は言う。倫理とは先進国の住人の贅沢だよ、と。

コンゴのスズ鉱山

 コンゴには、以前ベルギー人たちが開いたスズ鉱山がある。スズは、電子機器に欠かすことのできない貴重な資源。だからこの鉱山でも採掘は続いている。

 ただし労働環境は劣悪であり、落盤によって命を落とすものも少なくない。

 それ以上に問題なのがアフリカ特有の政治問題である。多くの国が内戦状態に陥っており、それぞれの陣営が活動の資金源を必要としている、隊員たちは何かしらの稼ぎを組織に納めなければならないのだ。

 コンゴのスズ鉱山もそう。ある勢力から守ってもらう代償として、別の勢力に「税金」を払っているのだ。

 国連のレポートにある「紛争鉱物貿易」、そのキーパーソンに話を聞く。

 国連コンゴでの活動にいくら使っているんだ?その半分を反政府勢力にくれてやればおとなしくなるんじゃないか?自分の存在価値を知らしめるために、俺たちがいかに悪いことをしているか、誇張して報告しているんじゃないか?第一、ここにいる奴らには教育も、ほかに食い扶持を稼ぐ方法もない。いったいどうすればいいんだ?倫理だけで食えるのか?

耳が痛い。

アフガニスタンのケシ畑

 アフガニスタンの主要産物はケシ。世界のヘロインの90%はアフガニスタン製だ。

 地元の警察や米軍の混成部隊が適宜取り締まりを行い、しばしば畑を焼き払ってはいるが、それでもケシ畑が減ることはない。

 撲滅計画が立案、実行されてはいるもののなかなか成果が表れないのは、その背景に複雑な事情があるからだ。

 麻薬はタリバンの資金源になるという、確かにそうだが、タリバンは他の作物からも収入を得ている。つまり農家たちからみかじめ料を徴収しており、それはどんな作物に対しても同じ、だからケシから小麦に作物を変えてもみかじめ料を納めることには変わりはない。一方、麻薬狩りを行う軍閥たちは、その職務に対して危険手当をもらっている。ケシ畑が減ることで、収入が減ることは避けたいのだ。

 まだある。ケシから小麦に転作を果たしたとしても、収穫物を市場には持っていけない。運ぶ途中でタリバンに襲撃される可能性が高い。ケシならば業者が引き取りに来てくれる。ケシ以外ではサプライチェーンが成り立たない。だからケシなのだ。

 解決策の糸口の一つが、非合法なケシを合法にする、つまり医療用に使用するアヘンとして欧米に売るルートを確立すること。もう一つがサフランを代替作物とすることだ。隣国のイラン産のサフランが欧米で高く売れるように、アフガンでもサフランの栽培を大々的に行えばケシに代わる産業になるかもしれない。

 いずれにせよ、カネとモノの流れを変えること、一部のアヘン業者が甘い汁をすすり、多くの兵士や農家が苦しむ状況を変えていかなければならない。

タンザニアのコーヒー、マラウィのお茶

今まであった人たちとは少し違う人たちに会った

 倫理的認証機関や生産協同組合に頼らず、自分たちの手で農場を運営し、農家を指導し、高品質な商品を作り上げ、認証機関を提示するよりも高い額で売ること。

 農家たちは自分たちの作物がどう加工され、どう消費されるかを知らない。だから、どうすれば自分たちの作物を高く売ることができるのかも知らない。そもそも識字率が驚くほど低く、物事を教えようにも教える術が限られているのだ。

そのような状況の中、地道な取り組みが成果を出し始めている。

 はたしてこのような取り組みはニッチ産業でしかないのか、それとも大企業でも行えるのか?

コートジボワールの綿花

 コートジボワールはアフリカ有数の綿花の産地である。

 しかし、アフリカの他の国の例にたがわず、この国も不安定な政情にもてあそばれ、産業の発展が見込めないでいる。綿産業も、綿繰り工場が使われることのないまま朽ち果てようとしていた。

 その立て直しに名乗りを上げたのが世界最大の紡績・綿取扱企業、オラムである。

 工場の配電盤を新しくし、栽培する品種を定め、綿以外の作物の分まで肥料を渡し*、機械化をしようにもその時期ではないと判断すれば牛による耕作を推奨し、地元の協同組合の幹部には不本意ながら「甘い汁」を吸わせるなど、経済的な合理性に基づいて施策を行っている。

 そんなオラムには、認証機関は必要ではない。

 自分たちの品質が確かなものであれば認証などいらない、そもそも認証機関に払う金は、だれが払うのだ?という。

 

*渡さないと、綿のための肥料を勝手に他の作物に使い、予定の収量が得られなくなるので。

 

この本を読んで感じたこと

まずは、売り手よし、買い手よし、世間よし。

近江商人のモットー「三方よし」です。

近江商人 - Wikipedia

 

 よい商品を作り、それが消費者の手に渡り、それぞれが利益を得ることができればそれが良い商売。 

 しかし、ここに紹介されたそれぞれの職場ではそれが成り立っていません。

 政情不安、生産者の知識不足、消費者の無関心。サプライチェーンの未整備。

 理由はいくつか挙げられますが、一番大きいのは、中間で甘い汁を吸う人たちの存在。それは認証機関の存在であったり、みかじめ料を請求する武装勢力

 いくつもの要素が複雑に絡み合って現状を形成しているわけですから、そうそう感嘆の解決するものではないのでしょう。

 しかしながら技術の発展により、認証という行為の壁が取り払われつつあります。その一例がブロックチェーン。あと10年もすると、仲介業務の多くが消えるといわれています。途上国においてもそのような変革が起こるかもしれません。

 

 また、我々先進国で仕事をする人にとって、これらの事例は他山の石です。

 社内、社外で物事の了解を取り付けるため、いったいどれだけのコストが発生しているのでしょうか?それは品質改善や倫理的な業務の推進にどれだけ役立っているのでしょうか?その担当者の立場を守るためだけに行われているのではないか。

  

 本当に良いビジネスとはどのようなものか、それぞれが考えてもいい時期に来ているのかもしれません。