【書評】帳簿の世界史 The Reckoning Financial Accountability and the RISE and FALL of Nations.

 昨年あたりからちらほら聞くようになったフィンテック、またはブロックチェーンという言葉。金融を巡る環境が今後激変する、というのはわかるのですが、では何がどう変わるのか?

 金融のAfterを理解するには、Beforeも知らなければ。

 ネットや日経書評欄で紹介されていたこの本を読んでみることにしました。

 

書名:帳簿の世界史

現代:The Reckoning Financial Accountability and the RISE and FALL of Nations.

著者:ジェイコブ ソール

出版社:文芸春秋 2016年

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どんな本か

  • 西欧の歴史を会計術という切り口で捉えなおした著作
  • 歴史の教科書で有名な人たちの以外な一面をうかがわせる作品
  • 歴史の教科書で名前しか覚えられなかった人たちが、何をしたか理解できる作品
  • 繁栄を支える会計というシステムがごく一部の不届き者によって骨抜きにされる不条理を説いた作品

取り上げられた歴史上の著名人

アウグストゥス古代ローマ)、レオナルド・フィボナッチ、フランチェスコ・ダティーニ(以上イタリア)、聖マタイ、コジモ・デ・メディチ、フランチェスコ・サセッティ、ルカ・パチョーリ(以上イタリア)、カール五世(スペイン)、デ・ウィット兄弟(オランダ)、ルイ14世、ジャン=バティスト・コルベール(以上フランス)、アダム・スミス(イギリス)、ロバート・ウォルポールジョナサン・スウィフトダニエル・デフォー、ジョサイア・ウェッジウッド、ジェームズ・ワット(以上イギリス)、ルイ16世(フランス)ジャック・ネッケル(フランスで活躍したスイス人)ベンジャミン・フランクリン、J・P・モルガン(アメリカ)、チャールズ・ディケンズチャールズ・ダーウィン(以上イギリス)

繰り返される「精算の日」

 建物を建てるには設計図が必要なように、国家という事業を円滑に運営するには優れた会計システム、会計担当が必要。

 だから、偉大な為政者は会計に通じており、常日頃財務状況をチェックしているような人も多かった。

 フランス革命、スペイン無敵艦隊の敗北、オランダ東インド会社の凋落といった歴史的事実の裏はそれらの会計システムが棄損していたという共通点が見いだせる。

 米国の植民地経営、郵便事業、鉄道事業の発展に際しては事業の巨大化、複雑化、高速化を支える会計システムが編み出されたのである。J.Pモルガンのような世界を席巻する金融企業がアメリカから生まれたのも、自然なことである。

 ただし、どんなに時代が進んでも「精算の日」は繰り返される。

 粉飾会計が白日の下にさらされ、世界経済が混乱をきたす。それは1920年代にも、21世紀に入っても起こっている。

  •  会計システムが複雑化して部外者に理解しがたいものになっている
  •  後ろ盾となるべき監査会社が、コンサルティングと称して利益の追求に没頭
  •  新興国といった把握、制御がより難しい国家が世界経済に組み込まれてきた
  •  権力を持つ側の欲によって、事実が伏せられている

 

 正しい会計システムが文化に組み込まれた社会は繁栄する。

 経済学とは数学的探究だけではなく、文化の歴史的研究から生まれた学問である。

 高い意識と意志をもって「精算の日」が再び訪れないようにしよう。

 

仕組みを作るのも、壊すのも、人である。ならば。。

 歴史のあちこちに散らばる出来事を、会計という横軸で捉えてみようとした作品。

 読み終えた当初の感想は、仕組みを壊すのが人なのなら、極力人の手を介在させないほうが良い。車の自動運転が普及すれば交通事故が減るように、ブロックチェーンやフィンテックをどんどん普及させれば、悪夢のような経済破綻は起きなくなるのではないか、でした。

 ただ、車の事故の大部分は不注意によるものであるのに対し、金融破綻の原因の多くは人の欲による作為的なもの。いわばコンピューターウイルスのようなものです。

 仕組みを作るものが欲に負けて悪に転じたり、もとより自分にのみ有利な仕組みを作る可能性もないとは言えません。

 ブロックチェーンは分散型台帳を基礎としたシステムであり、ズルをしても誰も得をしない仕組み、とのことですが。。

 読み終わった直後のすっきり感と、そのあとにぶり返してくる漠然とした不安。

 

 気持ちのパズルのピースが埋まらないまま、本棚に戻しました。

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